脳ドックの
症状ガイド

脳萎縮
脳が縮み、その体積が減少した状態をいいます。脳萎縮の原因はさまざまで、正常でも、個人差はありますが、加齢によって脳は萎縮します。脳が年齢相応以上に萎縮する原因としては、過剰なアルコール摂取、喫煙、過度なダイエット、ストレス、スマホなどの使用によって姿勢の悪い状態が長く続くことによる血行不良、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体病などの脳疾患があります。残念ながら、現代の医学では、萎縮した脳を元通りに戻すことは出来ませんが、原因となりうるものを解消することによって、進行を食い止めることや予防することは可能です。
脳梗塞
脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳細胞が障害を受ける病気です。日本では、寝たきりになる原因の第1位が脳卒中であり、脳梗塞は脳卒中の約4分の3を占めています。脳梗塞の種類としては、脳の細い血管が詰まって起こるラクナ梗塞、脳の太い血管が詰まって起こるアテローム血栓性脳梗塞、心臓にできた血栓が血流に乗って脳の太い血管を詰まらせて起こる心原性脳塞栓の3つのタイプがあります。太い血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓は、発症すれば、手足のマヒや言語障害などの重篤な障害を引き起こしますが、細い血管が詰まるラクナ梗塞では、自覚症状がなく、気付かずに経過し、MRI検査で初めて発見されることがあります。いわゆる「かくれ脳梗塞」や「無症候性脳梗塞」と呼ばれるものです。かくれ脳梗塞は、正常でも、高齢者の約10%に認められますが、かくれ脳梗塞を持っている方は、持っていない方と比べて3 – 4 倍大きな発作(脳卒中)を起こしやすいと言われています。脳梗塞を予防するためには、高血圧、喫煙、糖尿病、脂質異常症、不整脈、心臓病、生活習慣病などの危険因子に対する対策が必要です。特に高血圧の管理を徹底することが重要です。
大脳白質病変
脳深部の白質というところで、脳梗塞とは言えないまでも、血の巡りが悪くなっている状態をいいます。慢性脳虚血性変化とも呼ばれています。正常でも、高齢者では加齢的変化として認められますが、程度が強くなると、脳卒中や認知症を起こしやすくなると警告されています。高血圧がその最大の危険因子とされています。また、メタボリック症候群、痛風、心臓病、腎臓病なども関連すると言われています。大脳白質病変が認められた方では、将来の脳卒中や認知症の発症を予防するために、高血圧管理とともに生活習慣病全般にわたる管理を強化する必要があります。また、1~2年に1回の脳ドックをお勧めします。
脳微小出血
10mm未満の点状〜小班状の出血瘢痕であり、通常のCTやMRI検査では認めることは出来ません。特殊なMRI撮影法によってのみ、検出される病変です。その病的意義については不明な点が多く、アミロイド血管症との関連も指摘されていますが、脳微小出血の存在は、脳卒中の極めて強い危険因子とされています。脳卒中の予防には、血圧コントロールが最も重要です。
陳旧性脳出血
1980年頃まで、日本人の死亡原因の第1位は脳卒中であり、そのほとんどが脳出血でした。近年の高血圧の早期治療の普及により、脳出血の数は著明に減少しており、脳卒中での割合は5分の1以下に過ぎません。その一方、最近では、CTやMRI検査にて、症状を起こさないような小さな脳出血の痕跡が見つかるようになってきました。この脳出血が起こった後の瘢痕を陳旧性脳出血といいます。脳出血は、高血圧によって脳の血管が傷んだ結果として起きますから、一度脳出血を起こした方は、そうでない方に比べて再度脳出血を起こす可能性が高くなっています。陳旧性脳出血が認められた方では、脳出血予防のために、高血圧などの生活習慣のより厳格な管理と治療が必要となります。
脳腫瘍および腫瘍性病変
脳腫瘍には様々な種類がありますが、脳からできた脳実質内腫瘍と脳のまわりのものからできた脳実質外腫瘍とに大別されます。脳から発生した実質内腫瘍は神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれています。成人の神経膠腫では、悪性度の高いものが多く、短時間での進行が予想されますので、早期の確定診断と治療の可否の検討を行う必要があります。しかしながら、脳ドックで神経膠腫が見つかることは稀であり、発見される脳腫瘍のほとんどが脳のまわりのものから発生した実質外腫瘍です。髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腫瘍などが代表的な腫瘍です。これらの脳実質外腫瘍では、そのほとんどが良性であり、一部の例外を除き、経過観察となりますが、その判断に際しては、専門医による評価のうえ、個々の事情に応じて治療法を検討する必要があります。また、脳ドックでは、くも膜嚢胞、コロイド嚢胞、松果体嚢胞などの嚢胞性腫瘤が、しばしば見つかります。これらの嚢胞性病変では、当初6ヶ月毎2回、以後年1回のMRIによる経過観察でよいとされています。
脳動脈瘤
脳動脈の壁の一部分がコブ状に膨らんだ状態です。コブが破けると、くも膜下出血となります。くも膜下出血は、医療が進歩した現代でも、大変恐ろしい病気ですが、動脈瘤のすべてが破裂するわけではありません。正常人口でも2 – 6%が脳動脈瘤を持っているのです。動脈瘤の自然経過は一人一人異なっていますので、個々の動脈瘤がどのくらいの確率で破けるのか、破けるとすればいつ破裂するのかを正確に知ることは出来ませんが、これまでの多くの研究結果によって、動脈瘤の大きさ、形状、発生部位などから、動脈瘤の破裂する確率を、おおよそ推定出来る様になってきました。推測される破裂率が低ければ、治療の必要性は低く、経過観察となりますが、脳動脈瘤が見つかった方では、原則として、専門の医療機関をご紹介いたします。動脈瘤の自然歴、治療適応、治療方法、治療合併症などについて、専門医とご相談下さい。治療の可否や方針は、十分なインフォームドコンセントを経て決定されなければなりません。治療を行わずに経過観察する場合、半年から1年毎の画像検査が推奨されています。経過観察にて動脈瘤の増大や形状の変化が明らかとなった場合には、治療に関して再度評価を行うことが必要となります。また、動脈瘤の拡大や破裂には、高血圧、過度なアルコール摂取、喫煙が関与すると言われていますので、喫煙や大量の飲酒を避け、高血圧を治療する必要があります。脳動脈瘤を有する方は、もともとさまざまな心血管リスクを有しており、死亡原因はくも膜下出血よりも他の病気によるものが多いと言われています。まずは全身の健康を保つことが重要です。
脳動脈解離
動脈解離とは、血管を構成している膜が裂けることです。脳動脈が裂けると激しい頭痛を引き起こします。さらに裂け目が広がると、動脈を詰まらせて脳梗塞を引き起したり、血管の壁がコブ状に膨れて動脈瘤を形成します。動脈解離が原因の動脈瘤を「解離性動脈瘤」と呼びます。解離性動脈瘤は容易に破れ、くも膜下出血を引き起こします。通常の脳動脈瘤とは違い、再出血を起こしやすく、緊急の外科的治療が必要となります。従来、脳動脈解離は比較的稀な病気とされてきましたが、最近では、MRI、MRAなどの発達により、比較的若い年齢の脳梗塞の原因として、あるいは発症時の頭痛を契機として、未破裂の状態で診断される機会が増加しています。脳動脈解離は、脳の後方を走行する椎骨動脈に多く発生します。椎骨動脈解離は、動脈硬化などの危険因子を持たない比較的若い方に多く、原因はよくわかっていませんが、カイロプクティックや頸部の伸展・捻転を伴うスポーツや外傷が契機になることがあると言われています。椎骨動脈解離では、解離が起こって間もない急性期の場合、解離の進展が短時間のうちに変化しやすいことから、椎骨動脈解離が発見された方は、早期に専門の医療機関を受診していただく必要があります。
脳血管の蛇行・屈曲
脳動脈の走行には、個人差があり、先天的なものもありますので、血管の蛇行・屈曲が必ずしも異常というわけではありません。また、MRAは、乱流などの影響によって、蛇行・屈曲の程度を誇張する傾向にあります。しかしながら、蛇行・屈曲が顕著な場合、それだけ脳動脈内の血管抵抗が大きいことになりますから、脳動脈硬化症の可能性があります。特に精密検査や治療の必要はありませんが、動脈硬化の促進因子である高脂肪症、高血圧、糖尿病などの管理と治療を進めることが重要です。また、年に一度の頭部MRI・MRA検査が勧められます。
脳動脈狭窄・閉塞
MRI (MRA) 検査が普及する以前では、脳梗塞になって初めて診断されましたが、最近では症状のない状態でも見つかるようになりました。ただし、MRAでは、乱流などの影響によって、狭窄の程度が誇張される傾向にあります。動脈硬化が主な原因ですが、もやもや病のような稀な病気が潜んでいることもあります。脳動脈の有意な狭窄や閉塞が認められた方では、脳梗塞が引き起こされる危険が高いと考えられますので、専門医による注意深い評価のうえ、個々の事情に応じて治療法を検討する必要があります。また、心臓病、閉塞性動脈硬化症など末梢動脈疾患を合併していることが多く、これらの病気との関連に注意して検査を進める必要があります。禁煙、節酒をはじめ、高血圧、脂質異常症、糖尿病等の危険因子を厳格に管理、治療しなければなりません。

参照

脳ドックのガイドライン2014

脳卒中治療ガイドライン2015